さてここで還相回向について多分誰もがびっくりする話をします。私もびっくりしました。
「千の風になって」という歌がありますよね。あの歌の歌詞は宗教的真実であるということです。特に原作者が書いた元々の詞は前回の記事で書いた「而今の山水は 古仏の道 現成なり」そのままというか、より具体的にいろいろな言葉で説明しています。
私はこの歌の歌詞についてほとんど知りませんでした。何回か街の何処かから聞こえてきて、なかなか雰囲気がある曲だなと感じたことを覚えています。日本で歌われていた歌詞も全部は知りませんでした。私が知っていたのは「私のお墓の前で泣かないでください、、、、、、あの大きな空を吹き渡っています」の部分だけです。
それがとある団体の会誌を読んで、この詩の原作者とその人が作った詩を知ったのです。ではその詩を書いてみます。
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『生と死について』
私のお墓の前で泣かないでください
そこに私はいません
眠ってなんかいません
私は吹きわたる千の風の中にいます
私は静かに舞い落ちる雪の中にいます
私はやさしく降りそそぐ雨粒の中にいます
私は穀物がたわわに実る畑の中にいます
私は朝の静けさの中にいます
私は弧を描いて飛ぶ美しい鳥の
優雅な流れの中にいます
私は夜ふりそそぐ星の光の中にいます
私は咲き誇る花の中にもいます
私は静かな部屋の中にもいます
私はさえずる鳥たちの中にもいます
私は愛しきものひとつひとつの中にいます
私のお墓の前で泣かないでください
そこに私はいません
死んでなんかいません
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この詩の原作者はメアリー・フライというアメリカ人の女性です。結婚して間もない頃、二人で面倒を見ていた若い女性が、遠く離れた異国にいる母親が死んだことを知り、非常に悲しんでいる様子を見て勇気づけようと書いた詩、というのが真相なようです。
周りの人たちがこの詩を気に入り、だんだんと広まり、詩の表現なども少しずつ変わりながら、やがて作者不明の不朽の名作となって行ったそうです。
今の私から見ると間違いなくこのメアリーという女性は仏教が云う往相回向と還相回向を信じていたのだと思います。この詩を一気に書いたと言っています。しかも『生と死について』という題名をつけて。それまでの人生でこのような生命観、宗教観を確信していたのだと思われます。「、、、の中にいます」という言い方にもよみがえりを確信していたことがうかがわれます。特に終わりの方にある「私は愛しきものひとつひとつの中にいます」のことばが素晴らしい。
人生において様々な自然現象を愛しいと思った時の心は決して無にならず、何らかの偉大な力によりこの世によみがえるということをある時から信じるようになったのでしょう。
メアリーは大変不幸な生い立ちで3才の時両親を失い遠い親戚に預けられ、何らかの事情で学校にも行けなく、叔父さんが変わりに字や勉強を教えてくれたが、そのおじさんも10才の時になくなり、家政婦を転々としたりして、やがて12才の時出稼ぎ労働者の下宿に住むことになったということです。
その宿舎のすぐ近くにかなり大きな図書館があったので職探しをしながら夜は毎日のようにその図書館に通ったそうです。何とかデパートのレジ係に就職でき、23才の時映画館の窓口の職を得、その仕事を通して知り合った男性と24才で結婚し、しばらくしてからこの詩のもとになる不幸な女性と出会うことになりました。その図書館の本は殆んど読んでしまったそうです。
結婚するまでは大変に辛い人生で、楽しみは本を読むことと移り変わる自然の良さを味わうことだったのでしょうね。(続く