kosame21のブログ 人生の目的

なぜ生まれなぜ死んでいくのかは決して永遠の謎ではありません。仏教はそれを説明しています。その具体的な説明を第一回「人生の目的」(2021.9.07)から第四十三回「新しい時代に向けて」までに書きました。どうぞ読んでみてください。

回向 3 而今の山水は古仏の道現成なり

仏教の悟りには即身成仏、見性大悟、機法一体のような特別な悟り、また三法印や十二支縁起を知る悟りがありますが、決してこれらだけが悟りではありません。

何かを好きになったり、愛しいと思ったり、尊敬したり、称賛しているときはそれがどういうものかを正しく悟っています。浄土往生の種を結んだということです。そしてそれを見た他の生き物がいいと思い喜ぶことも正しい悟りで良い種を結んだことになります。

各々の無為自然な行為によりそれぞれが浄土往生の種を結んでいるのだから、あらゆる生き物がお互いに往相回向をやり合っているということが言えると思います。

この点から見ると親鸞の回向観は充分ではないと私は考えます。彼は念仏だけが正しい行であつて念仏さえすれば阿弥陀仏の本願力という他力に回向されて浄土に往生するとしていますよね。それが往相回向であると。法然も念仏だけていいとしていますよね。法然親鸞大乗仏教の教理教学をあまり理解していないというのが私の感想です。

念仏を勧めるのは大変いいことだと私も思います。念仏により機法一体の境地を実感すれば喜びの心が生じ、思い煩うこともすくなくなり、それ以後の人生も相当充実したものになるでしょうから、念仏を勧めるのは良いことです。

しかし念仏だけでいいというのは余りにも強引というか単純すぎると思います。あの禅の高僧白隠も「仏典においてあれほどの膨大な文字数や緻密な用語で色々に説明されているのに、結局念仏だけでいいというのはいくら何でもおかしいのではないか」というようなことを言ってますよね。私も同じです。

大乗経典が示している重要な教理のひとつに「自然現象が永遠のブツダの教えであり、仏法である。神秘的な教えのことば、絵の文字、色の文字であるからそれらをじっくりと味わって浄土に往生する種をたくさん結ぶことが大切である」があります。諸法実相です。法然親鸞もこの辺をほとんど理解していなかったことがわかります。

還相回向というのは過去に浄土往生した仏たちが阿弥陀仏の願力によりこの世、意識の世界に回向されて今度は無明を救う存在として活動するということです。復活、よみがえりです。

肉体があるからいろんなことができるのですよね。普段の何かをしたいと願う自我意識は肉体がその願いをかなえてくれるから何かをできるのです。

病気や事故でリハビリしている多くの人が、今まで普通にやっていたことがどれだけすごいことなのかがわかったと言っています。見る、聞く、食べる、座る、立つ、歩くなどの簡単なことでもすごいことです。なぜ簡単にできるかというと、それらの快適な行為により悟って仏となった過去の生命が今報身仏として還相回向されよみがえり、潜在意識の奥で活動しているからです。

この報身仏は正報身仏と言います。もうひとつその肉体の対象となる自然現象が依報身仏で、やはり阿弥陀仏の願力により還相回向された過去の古仏です。悟りは肉体という主観と自然という客観が一体になった時に成就します。阿弥陀仏はそれを決して忘れず、自分の智慧の中に吸収し、それをこの地上に還相回向して新しい智慧として地上の生き物に示すのだと思います。

このことを短い言葉で言い表している文章が道元禅師の「正法眼蔵」にあります。「山水経」という章の冒頭に「而今の山水は 古仏の道 現成なり」とあるのがそれです。

今ある山や川などの自然現象は過去に仏になった者たちの悟りがよみがえって現実として成立しているのだ、という意味です。前に説明した「山川草木悉皆成仏」も同じ意味です。この成仏は仏に成るではなく現成の仏です。

従って現代の人間による膨大な自然破壊や深刻な環境汚染は今よみがえって迷いの霊を浄化しようとしている聖なる霊を冒涜していることになります。自然現象がこの宇宙の主宰者の恵みのことばであるということをみんなが自覚するべき時が来ているのではないでしょうか。(続く