kosame21のブログ 人生の目的

なぜ生まれなぜ死んでいくのかは決して永遠の謎ではありません。仏教はそれを説明しています。その具体的な説明を第一回「人生の目的」(2021.9.07)から第四十三回「新しい時代に向けて」までに書きました。どうぞ読んでみてください。

妙観察智

自然という経典を快く受け止め、味わい、称讃することによりたましいが豊かになって行くと言ってきましたが、実は自然にはそのような直接的な感情を与える以上にもっと素晴らしい意味があります。

鳥は鳥という方便で空中を中心にして修行をし、魚は水の中での修行を楽しんでいます。そのように人間にも方便としての人間らしさがあるはずです。

そのひとつですが人間の特性である知性を使うのです。知識として知っただけではあまり価値がなく、知ることによって神の心、神の想いがわかり特別な感情がわいてくる、それが大切でそのような知性が必要です。少し前に自然現象は神が書いた経典であってそのことばは神秘的で甚だ深く霊妙である、と言いましたがその神のことばをくわしく探求することが人間の主要な知性であり特性です。これを仏教では妙観察智と言います。

ここでギリシャの哲学者プラトンが関係してきます。いわゆる「イデア」と言われているもののことです。イデアとは観念のことで神の想念です。イデアは無数にあるとプラトンは言っています。たとえば具体的なものでは「人間」「馬」「海」「水」などなど。抽象的なものでは「美」「勇気」などのイデアです。このイデアを探求するのが「哲学、フィロソフィア」ですよね。フィロが愛でソフィアが知恵のことで普通哲学は「愛知」「知ることへの愛」を意味します。

プラトンは地上の存在はすべて真のイデアではなく天上のイデア界の影であると主張しました。そして人間はイデアを知ることができないと彼は言いました。なぜなら霊魂が天上のイデア界から地上の肉体という牢獄に落ちて来てしまったのでイデアを知ることができず、人間は天上のイデア界の影を見ている。いや元は霊魂は天上にいたので知っていたのだが想い出そうとしても想い出せないのだと説明しています。

この辺は私の見方とかなり異なります。肉体を持って地上に生まれてくることにより、さまざまな迷いの霊が救われ、たましいがより良いものになって行くのですから肉体は大切なものであり、肉体を牢獄と見るのはどうか。また彼はイデアを知ることができないと言っていますが私は知ることができると主張します。実際にほんのいくつかですが知ることができました。

しかし彼の考えに同意するところもあります。イデアが何か懐かしくて良いものだという気持ちとイデアを想い出そうという気持ちが重なったような心がいわゆるプラトニックラブです。「美」という観念や「海」という観念に初恋のような精神的恋をするというのです。そしてその恋心もまた情欲としての恋と同じようにエロスなのだと主張しています。この考えは大変に重要であり、人間の本当の知性がどういうものかについてを示していると思います。

しかしプラトンイデアを知ることができないと考えたので、フィロソフィアがエロスであることについての完全な説明ができないのです。またエロスの心がなぜ大切なのかももうひとつ説得力がないように私には思えます。私はほぼ完全にこれらのことを説明できるのではないかと思っています。

いくつかのイデアを知ることができたと言いましたが、自分だけの力でわかったのではなく、民俗学の本を読んだり、昔からの言い伝えを思い出したり、感性が豊かな人の詩などを参考にしてやっといくつかがわかりました。

ということはですね。太古の人たちはイデアを探求していたことになります。そしてイデアを知ることによりなお一層神の教えである自然を崇拝し恋慕ったのです(エロス)。むかしの日本人が八百万の神を崇拝したのも同じことです。